アイリンク国際特許商標事務所による、店名の決め方講座です。今回は成功例や失敗例の考察です。
店名を決めるときには、何を基準に考えて良いか分からず迷ってしまいがちです。
安易に決めた店名が仇となり、お店の売り上げに影響を及ぼしてしまったり、知名度が上がりにくくなってしまうケースは少なくありません。
今回は、店名の決め方について解説します。
この記事を読むことで、
- 店名の決め方の成功例
- 店名の決め方の失敗例
- 店名で何がどう変わるのか
- 売れるお店の店名に共通すること
- 店名の決め方
について理解することができます!これからお店を構えてビジネスを始めたい方必見の内容ですよ。
店名の決め方を工夫して生まれたネーミング成功例
それではまずこの章では、店名をうまく工夫して決定し、その後知名度を上げて人気店となった成功例について3つ紹介していきます。
どのような点が良かったのか、成功の理由を見極めていきましょう。
1.いきなりステーキ
名前の通り、「いきなり一件目からガッツリ旨いステーキをサクッと食べる」をコンセプトとしたステーキチェーン店、いきなりステーキ。
名前から、
- サク飯でもステーキが食べられそう
- 一人でも入りやすそう
- 時間がかからなさそう
など、手軽で利用しやすいイメージを抱かせる秀逸なネーミングですね。ロゴにあるロケットがさらにスピード感を演出。
忙しいビジネスマンや、時間はあまりないけれどサクッとステーキが食べたい人に刺さるネーミングです。
2.ベローチェ
イタリア語で「迅速」の意味を持つベローチェ。
ベローチェは、スタバほど雰囲気重視ではなく、電車待ちや待ち合わせの時間までの隙間時間に手軽にコーヒーを飲みたい人をターゲットにしています。
安価でかつ名前の通りスピーディなサービスが魅力で、多くの人に愛されているカフェチェーン。
ベローチェという名前は短く言いやすい上、他に似た名前がないため知名度が上がりやすかったと言えます。
3.モスバーガー
モスバーガーはマクドナルドやロッテリアなどと並び全国的に有名で人気のハンバーガーチェーン。
モスという言葉は、Mountaion(山)、Ocean(海)、Sun(太陽)の頭文字を取った造語ですが、短くてとっても呼びやすいですね。
「モスにしよう」など、略して言いやすい点も良かったのでしょう。モスバーガーは、子供から大人まで、幅広い世代に愛されるハンバーガーとして地位を確立しています。
店名の狙いを外しリピート率上がらない失敗例
では、逆にどのような店名が失敗例として挙げられるのかというと、
- 言いづらい
- 覚えられない
- 意味が分からない
という、要は「何だかよく分からず耳に残らない店名」です。
具体的な例を挙げてみましょう。
1.Wet Whisker(後のシアトルズベストコーヒー)
Wet Whisker(ウェットウィスカー)という名前はSeattle’s Best Coffee(シアトルズベストコーヒー)の元の名前です。
Whiskerとは英語で「ヒゲ」の意味。動物の髭や人間の頬のヒゲです。ですがこの名前、コーヒー屋さんであることさえ分かりませんし、あまりしっくりきませんよね。
ウェットウィスカーは1991年にシアトルでベストコーヒーコンテストで優勝したのを機にSeattle’s Best Coffeeと名前を変え、今では世界的に有名なコーヒーチェーンに成り上がりました。
元の名前のままでは、英語圏ならまだしも日本や他の英語圏以外の国ではなかなか定着しなかったのではないでしょうか。
2.DomiNick’(後のドミノ・ピザ)
DomiNick’(ドミニックス)は現在のDomino’s Pizza(ドミノ・ピザ)です。
ドミノピザは、もともとDominick DeVartiさんのピザ屋だったことから店名をDomiNick’にしていたわけですが、この名前よりも明らかにドミノ・ピザの方が親しみやすく記憶に残りやすいです。
ドミニックスでもそこそこ知名度はあったそうですが、今ドミノ・ピザが世界進出していることを考えると、より単純で口に出しやすい「ドミノ・ピザ」に改名したのは正しい判断だったと言えます。
店名の決め方で変わる2つのこと
店名も大事だけれど、提供しているサービスが良ければ結果的に繁盛するのでは?と思う方も多いのではないでしょうか。
しかし、店名はとても重要な要素となるため、安易に決めないようにしましょう。ここで、店名によって実際何が変わるのかを解説します。
リピート率
お店が成功するか否かはリピーター獲得にかかっていると言っても過言ではありません。
新規顧客を取り込み続けなければ売り上げが立たない状態では、常に膨大な金額を広告費に投資する必要があり、利益が上がらないからです。
店名で失敗すれば、リピート利用をしようとした顧客が
- お店の名前を思い出せなかった
- 検索して探し出そうとしたが見当たらなかった
などの理由で来店できなくなってしまい大きな機会ロスにつながります。
店名によりリピート率が下がるとなれば、いかに店名を決める際に工夫することが大切かは明白です。
拡散力
今の時代もっとも拡散力のあるツールと言えばSNS。
強力で即効性のあるSNSマーケティングを使いこなし、効果的にお店の認知度を上げていくことができれば最高です。
ここで重要なカギとなるのがハッシュタグ。
仮に店名が
- スペルが難しい
- 10文字を超える長い名前
- アルファベットにしづらい
などの場合には、SNS上のハッシュタグとして見栄えが悪い上、潜在顧客の目線で見ても分かりにくいため効果的なSNSマーケティングができません。
短い店名かつ分かりやすい店名であれば、認知されやすく拡散されやすくなります。
人気が出る店名の決め方には3つの共通点がある
人気が出る店名と、いつまでも人気が出ない店名にははっきりと違いがあることが分かりましたね。
ここで、人気が出る店名に共通する3つのことについて解説していきます。
1.間違えにくい
思い出そうとしても一部しか思い出せなかったり、そもそも言い間違いが起こりやすい名前なら、店名としてはNGです。
人気の出る店名はどれも短く簡単で、間違えようがないものになっています。また、他のお店に似た名前がないことも重要。
たとえばベローチェという店名にする際に、すでにベローチャなんていう名前のお店があれば、かなり紛らわしいですよね。
2.覚えやすく記憶に残りやすい
人気の出る店名は強いインパクトを与え、一度聞いたら忘れられないようなものであることも多いです。
有名なチェーン店、「びっくりドンキー」や「やよい軒」、「なか卯」などを思い浮かべると、どれも覚えやすいものばかりであることに気づきます。
記憶に残りやすければ、それだけ人に伝えやすくなるということ。拡散され、どんどん知名度を挙げていくことができます。
3.口にしたくなる心地よい響き
何だか分からないけれど、口にすると気持ちがいいと感じる言葉は存在します。店名も同じことで、何度でも口に出して言いたいようなお店の名前なら、世間話に登場する頻度も高くなるはず。これが拡散力を高めていく秘訣でもあります。
口にしやすい心地よい響きとは、
- 繰り返し言っても舌を噛みそうにならない
- 途中で切れ目がなく一音節で言える
- 勢いを感じる
などの特徴を持つ店名です。
言ってみれば、シナモンロールのお店「シナボン」なんかも造語ですが、とても可愛らしい響きで、間違いたくても間違えられないほどシンプルで言いやすいですよね!
人気が出る店名の決め方5つのステップ
最後に、これから店名を決める方のために、人気が出る店名の決め方を5つのステップに分けて解説していきます。
チェックすべきことや、必ず済ませるべき商標登録についても触れています。ぜひ参考にしてくださいね!
1.店舗のコンセプトや狙いを明確にする
店名を決めるにあたって、まずは店舗のコンセプトや狙いを明確にしておく必要があります。
店舗理解を深めるための重要要素は以下の5つ。
▼店舗についての理解を深める5つの要素
店舗理解の要素 | リサーチすべき事項 |
1.コンセプト | 店舗に込められた想い |
2.看板メニュー | 販売する商品の中でメインとなるもの |
3.特徴 | 他店と比べて何が違うのか |
4.利用目的 | どのようなシチュエーションで利用されるのか |
5.客層 | ターゲットの年齢層・性別・年収 |
上記を明確にすることで店舗理解が深まり、改めて何を重視すべきかが見えてきます。
2.候補となるキーワードを挙げる
ここからは、実際にあなたのお店の店名を考えていきます。
店舗のコンセプトや、ターゲット層に刺さると思われるキーワードをどんどん候補に挙げていきましょう。
ある程度出し尽くすと、ネタ切れを起こしてしまいますが、
- キーワードを外国語で検索してみる
- 共起語検索ツールを活用する
などしながら、数多くキーワードを出していきましょう。
3.キーワードから店名を考える
キーワードを集めたら、ここからは以下の方法を参考に、店舗の名前の候補を作ります。
- キーワードとキーワードを組み合わせる
- キーワードを略す
- キーワードを逆読みする
- クラウドソーシングを利用する
キーワードを活用し、何通りかの店名の候補を挙げていきます。
それでも思い浮かばない、いまいちピンとこないという場合にはクラウドソーシングを活用し、新たなアイデアを集める方法があります。
4.すでに商標登録がないか確認
あなたが思い付いた店名は、もしかするとすでに他のお店で使用されているかもしれません。すでに商標登録されている名前を使うことはNGとなるため、事前に確認しておく必要があります。
候補に挙げている店名を特許情報プラットフォームで検索すれば、同じ名前や似た名前がないかを調べることができるので、必ずチェックしておきましょう。
5.認知経路ごとにバズるか検証しておく
新しいお店をオープンする際には、様々な方法で告知していきます。
- チラシ
- テレビCM
- SNS
- 公式WEBサイト
多くの場合、世間の人たちは以上のような経路からお店の存在を知ることになります。
ここで重要となるのが、認知経路ごとにバズる店名かどうかを判断すること。
例えば、高級な和食店であれば、客層は年齢層高め。この場合SNS告知でバズりやすいかを見極めるよりも、チラシで見た際にインパクトがあるかを考えるべき。
逆に学生をターゲットにした格安のランチ店なら、学生がよく見るであろうSNSに重きを置いてバズるかどうかを検証すべきです。
どの認知経路が最もお店の集客に繋がりそうなのか、その見極めはとても大事です。
いかがでしたか?
今回は、店名の決め方について解説しました。
人気のでる店名とそうでない店名に、どのような違いがあるのかが明確に理解できたのではないでしょうか。
店名は一度決めてしまったら、そう簡単に変えることはないものです。しっかりと工夫して熟考した上で決めていきたいですね。
あなたのお店の名前が、多くの人々に愛され、人から人へと語り継がれていくものになりますように!
決定した店名は忘れずに商標登録をすませ、他社から悪用されることのないようにしておきましょう。
ネーミングや名前に関するお悩みがありましたら、私共、「断らない商標事務所アイリンク」にお気軽にお問合せください。