アイリンク国際特許商標事務所による、商品名の決め方講座です。今回は、商品名の由来やその狙いなどについて考察します。
「おもしろい」と思える商品名とは何かを知るには、既存の商品を見て学ぶのが圧倒的に効率が良いです。
今回は、年間1万点もの商品名を分析しているWEBアナリストが独自におもしろいと考える商品名を13個まとめました。
『売れる商品名の決め方5ステップ』という記事では、詳しく商品名の作り方について成功例と失敗例を分析した上でまとめてますので、読んでみてくださいね。
おもしろい商品名13選 | 成り立ちや商品の狙いなどを徹底考察
1.い・ろ・は・す | 日本コカコーラ株式会社
い・ろ・は・すの名前の由来は、『LOHAS(lifestyles of health and sustainability)』という健康で持続的な生活様式といろは歌の『いろは』から取ったものです。
LOHASに則って、リサイクルペットボトルを採用し、現在では100%リサイクルペットボトルとして生産されています。
CMでも環境問題にフォーカスした切り口でクリーンなイメージを全面的にアピールしているい・ろ・は・すは、様々なお水商品がある中で絶大な人気を誇っています。
2.休息時間 | ライオン株式会社
商品名の由来はネット上で公開されていなかったのですが、個人的に秀逸な商品名だったので掲載しています。
足に貼るタイプの商品としては、サロンパスが有名でしたが女性向けに「足のむくみが気になる」という悩みに対して刺さる商品として出されたのが『休息時間』でした。
今では、休息時間のブランドで以下の様々な商品が発売されています。
3.熱さまシート| 小林製薬株式会社
当時これまでにない商品だったため、あえて分かりやすいネーミングを重視して生まれたのが『熱さまシート』という商品名。
実はシンプルな商品に見えてかなりこだわった製品で、製造工程もかなり厳しいテストをパスして開発された商品でした。
イメージしたのは、お母さんがおでこに手を当てた時のやさしく包み込む感じ。
その上、子供に合わせたサイズ感と張り心地を重視した厚みを再現するために、たくさんの人の知恵を絞り苦労を重ねてようやく完成したのが『熱さまシート』でした。
4.じゃがりこ | カルビー株式会社
『じゃがりこ』の商品名の由来は、商品開発者の友人であるりかこさんが、新しく開発したお菓子を美味しそうに食べている姿から、「じゃがいも+りかこ」で『じゃがりこ』という風に命名しました。
今では、31種類のじゃがりこを販売していて、手が汚れなくて食べられて良いと子供から大人まで大好きなじゃがりこブランドが出来上がりました。
当初は、女子高生がカバンに入れて持ち歩けるじゃがいものお菓子を作ろうということで開発がスタートしました。
5.パピコ | 江崎グリコ株式会社
パピコの商品名の由来は、半擬音のパピプペポを組み合わせて作られていて、特に意味はないそうです。
実は半擬音を使った商品名は、売れる商品名によく使われており、歯切れが良く口ずさみやすい傾向にあります。
今ではたくさんの種類が開発されており、特に秀逸なのは、アイスで野菜が摂れるやさいスムージーのパピコです。
健康志向のユーザーでもアイスを楽しめる商品となっていて、密かに注目している商品です。
6.PIXUS(ピクサス)| 花王株式会社
ピクサスには、様々な単語の意味を盛り込んで作られています。
- 画素を意味するpixel
- 写真を意味するpicture
- 無限大を意味するX
- yourstyleという意味のUS
上記4つの要素を組み合わせてピクサスと名付けられました。
名前からも分かる通り、プロからハイアマチュア層を狙った高性能なインクジェットプリンタです。
人が綺麗だと思う空、海、緑、肌の色などの絵作りを繊細に再現できるのがピクサスの最大の見所と言えます。
そういったプロ仕様のプリンタを名前に反映して、洗練されたイメージをアピールすることに成功しています。
7.ピノ(PINO)| 森永乳業株式会社
1970代にカップアイスやコーンアイスくらいしかなかった時に、一口で食べられるアイスを開発しようと誕生したのがピノ。
イタリア語で松ぼっくりを意味するPinoを文字ってピノと名付けたそうです。
少なすぎず、多すぎずのちょうど良い内容量設計で、手にチョコがつかないようにピックで食べる工夫も秀逸で爆発的に人気になりました。
8.ファブリーズ(Febreze)| P&Gジャパン株式会社
参照:消臭剤・芳香剤のファブリーズ公式サイト | P&G マイレピ
ファブリーズ(Febreze)は、英語で『布』を表すファブリック(fabric)と「そよ風」を表すブリーズ(breeze)を組み合わせてできた商品名です。
普段洗えないものを洗うというコンセプトでファブリーズを販売し、大ブレークしました。
日本人の特性として綺麗好き、洗濯好きという点において、匂いがついたら洗濯する習慣に注目しました。
ファブリーズの一番の強みは、当時なかった除菌消臭という機能面です。
機能面のアピールを洗えないものが洗えるというコンセプトに乗せて、CM制作をした結果、爆発的に売れる人気商品となりました。
9.FRISK(フリスク)| ペルフェティ・ファン・メレ社
参照:FRISK|LINE UP|FRISK Japanese Official Website
商品名の由来は、ノルウェー語でフレッシュを意味する言葉「FRISK」からで、それをシンプルに商品名に採用しています。
近年、タブレット商品は増えており、差別化が難しくなってきているフリスクですが、疲れを取るというイメージよりもエネルギーを授けるという方向性のブランディングを進めて売り上げを伸ばしています。
翼を授けるというキャッチコピーで有名なレッドブルと同じく、プラスでエネルギーになってくれるものとしてフリスクはこれから扱われ方が変わるのかもしれません。
10.ブラックサンダー | 有楽製菓株式会社
商品名の由来は、材料のココアクッキーや見た目の黒さから「ブラック」、子供に人気なもの=戦隊モノというイメージから「サンダー」となり、ブラックサンダーという名前になりました。
ちなみにブラックサンダーの異色なWEB限定CMも、密かに話題になっていました。
チョコレート菓子の売り上げ個数で4年連続NO.1の実績を誇るブラックサンダーはプロモーションもユニークです。
購入層は、子供かと思いきや30代~40代の男性のビジネスパーソンで、朝食や残業で小腹が空いた時に重宝されるお菓子として大人に人気。
11.プッチンプリン | 江崎グリコ株式会社
商品名の由来は、開発者の企画メモにあった「プッチンしたらぷるるんと出る」という文章をもとに商品名が決められました。
企画当初、社長からは「プリンなんか売れるか」とボツにされていた企画。
グリコにしかできない、斬新な企画を提案する必要があったため、普通に美味しいだけではダメでした。
プリンの美味しさを倍増させるのは、カラメルがキモだと分かっていても、カラメルと一緒にプリンを食べるには底までスプーンですくう必要がある点が課題でした。
そこで、容器の底に穴が開くような突起を作り、プッチンするとプリンがお皿にとり出せる今の形を開発したのです。
商品名の通り、斬新なプリンが出来上がり、瞬く間にプッチンプリンはベストセラー商品の仲間入りを遂げました。
12.ママレモン | ライオン株式会社
商品名の由来は、近代的な家庭と若い結婚女性を示す『ママ』と肌を綺麗にするイメージの『レモン』を組み合わせて『ママレモン』という商品名になりました。
家庭用の食器用洗剤としてママレモンは定番中の定番というイメージをアピールすることに成功しています。
当時の食器用洗剤でも群を抜くほどの洗浄力で爆発的に売れましたが、レモンの香りの食器用洗剤と言えば『ママレモン』と言われるまでになりました。
そこにも商品名の仕掛けがあったわけですが、レモンの香りを商品名に分かりやすく入れていることもあり、レモンの香り=ママレモンと連想しやすい仕掛けになっていました。
また、ママという言葉も家庭を連想させるため、他の単語よりも家庭用食器用洗剤として覚えやすい名前になっていたこともあり定着しやすかったと考えられます。
13.ポカリスエット | 大塚製薬株式会社
人間が汗をかいて失われる水分と電解質を手軽に補給できる飲料があれば売れるのでは?と開発されたのが、ポカリスウェット。
商品名の由来も汗の飲料なのでスウェット(汗)、ポカリは半擬音となる『ポ』とさわやかな青空を彷彿させる音の響と語呂の良さを考えて生み出したものだそう。
発売当初は、まずい、味が薄いとなかなか理解されない商品でした。
コンセプトは、汗をかいた時に一番体が欲する飲み物だったため、理解してもらうまで歩いて配り続ける地道な努力が積み上げられました、その数なんと3000万本。
結果的に発売から2年後に爆発的な大ヒットを収める結果になりました。
パッケージも含め、コンセプトに沿ったポカリスウェットは今も変わらず多くの人に愛されています。
おもしろいと感じる商品名の特徴5選
1.ストーリ性がある
どんな時に必要とされる商品なのか、というのが商品名をみれば分かるようになっているものが比較的に多い傾向にあります。
どんな人のために作られたのか、CMでもプロモーションされているポカリスウェットのような商品は、商品の機能面だけではなく、コンセプトも含めて愛される傾向にあります。
2.ターゲットが明確
ただ商品名を決めても、届いて欲しいターゲットに届かなければ意味がありません。
おもしろいと感じる商品名は、ターゲットが明確に表現されています。
例えば、ママレモンのような20代~30代のママに向けて商品名を設計している商品は、爆発的な認知とともに「◯◯と言えば××」と言われるような商品になることだってあります。
3.意外性がある
今までにない画期的なものであれば、意外性のある点を前面に押し出した商品名のも面白いです。
例えば、プッチンプリンの例で言うと、プリン自体に注目した商品名ではなく、プリンの容器に注目した商品名になっています。
当時は、プッチンプリンと初めて聞いたユーザーは「プッチンって何?」となって興味を多いにそそられたはずです。
『プリン自体の特徴に対して商品名をつけるもの』という常識があっただけに、プッチンプリンという商品名は常識では考えられない意外性があったと言えます。
4.若い層狙いには半擬音を使う
今や常識となっている商品名に使われる半擬音(ぱぴぷぺぽ)ですが、若い層狙いによく使われます。
今回紹介した、パピコ、ピノ、プッチンプリン、ポカリスウェットなどには、半擬音がもれなく使われています。
どれも若い層をターゲットにした商品であり、口ずさみやすい商品名に設計されています。
5.広告戦略から逆算されている
例えば、『い・ろ・は・す』であれば、差別化しづらいお水業界でクリーンなイメージを突き抜けるプロモーションを行っています。
健康で持続可能な生活様式を示す『LOHAS』、日本を象徴する『いろは』を組み合わせて商品名にしたことでCMで『い・ろ・は・す』の名前の意味を知ってさらに「なるほど」となる設計になっています。
お水の美味しさはもちろん、リサイクルのしやすさにこだわった斜め上をいく戦略で商品名もハマるように設計されています。
いかがでしたか?
おもしろい商品名を13選ご紹介してきましたが、『おもしろい』の正体を少しでも掴めたと思っていただけていると嬉しいです。
今回ご紹介した商品名は、笑えるという意味のおもしろいではなく、気に入ってもらえる商品名という視点でご紹介しました。
おもしろい商品名を考えるきっかけになるように商品を選定して記事作成をしていますが、今後も更新していきますので、たまにチェックしていただけると嬉しいです。
ネーミングや名前に関するお悩みがありましたら、私共、「断らない商標事務所アイリンク」にお気軽にお問合せください。